失敗しない物件選び


物件探しのポイント

店舗用物件選びは、売れるお店を作るために最も重要な条件です。物件選びを間違えると、あとから取り返しがつきません。どんなに味が良く、レイアウトも工夫されたパン屋・ベーカリーでも物件選びによっては、失敗してしまうことも考えられます。こちらでは、パン屋・ベーカリーを成功させるために知っておきたい物件選びのポイントをお伝えします。

物件選びで特に気をつけるポイント

店舗のイメージを具体的に考える

店舗のイメージを具体的に考える(イメージ画像)

失敗しない物件選びをするポイントのまず1点目は、自分の店舗のイメージを具体的に持つことがポイントです。駅前・表通りなのか郊外型か、大きさはどのくらいか、顧客ターゲットは、などできるだけ自分の理想に近いお店のイメージを持つことが、適否を判断する基準になります。
様々な物件を確認してから決定する

様々な物件を確認してから決定する(イメージ画像)

点目は、当たり前ですが、たくさんの物件を見て回ることです。2件の物件から良い方を選ぶのと、20件の中から一番の物件を選ぶのでは、その結果の違いは明らかです。多くの物件を見て回ると、次第に見るべきポイントがわかるようになり、お店の入口、レジの位置、厨房レイアウト(オーブンの位置)などが想像できて、問題点も浮かび上がってきます。最低でも10件くらいは現地下見をして比較検討したいものです。

パン屋・ベーカリーを開業する際にチェックするポイント

【check1】ベーカリーが開業できる場所か
建築基準法など法規上、ベーカリーが開業できない場所でないことを確認します。

(1)用途地域による店舗用途制限

第一種低層住居
専用地域
基本的に店舗は建てられません。ただし、店舗兼用住宅で、非住宅部分の床面積が50㎡以下かつ建築物の延べ面積の1/2未満であり、自家販売のために食品製造業を営むパン屋は建てられます。しかしこの場合でも、原動機設備は出力総計が0.75kW以下に制限されます。
第二種低層住居
専用地域
店舗は150㎡以下、かつ店舗部は2階以下ならばOKです。ただし店舗兼用住宅の場合は第一種低層住居専用地域と同じ制限があります。やはり原動機設備は出力総計が0.75kW以下に制限されるので、フル装備のパン厨房をつくることは現実にはむずかしいといえます。
工業専用地域 店舗、住居は建てられません。

(2)テナントの用途変更などにより確認申請が必要な場合

テナントの用途変更などにより確認申請が必要な場合(イメージ画像)

一定規模以上の建築物を新築、増築、改修する場合は、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければなりません。貸店舗の場合、従来の用途と同じなら構いませんが、「住居→店舗」や「事務所→店舗」など、用途変更がある場合は、確認申請が必要です。完了検査を受けていない物件は、用途変更の申請が出せないか、出せたとしても、現在の厳しい建築基準関係規定に適しているかの報告をしなければならない場合が多く、貸主が申請に躊躇する場合が少なくありません。物件選びでは、貸主に上記の条件がクリアできるか、確認するようにします。

【check2】大きさと形状

厨房機器の選択や販売形式(セルフか対面か)によって、おおよその必要な面積が想定できます。また、トイレ、倉庫、事務スペース、休憩室などが考えられます。保健所の指導により、独立した更衣室が必要となったり、トイレは厨房と隣接しないように前室を設けたりする場合が多いので、多少の余裕を考慮しないとプランづくりをする段階で困ることになりかねません。

店舗の形状はどうでしょうか。複雑な形状より単純な四角形が、最も効率の良いレイアウトを可能とします。また、店舗入り口に大きな段差はないか。資材搬入の出入り口が設けられるかなどもチェックします。

【check3】通行量と人口

多くの方にお店の存在を認識していただけなくては、来店客数の確保は期待できません。人、自転車、車の通行量を調べます。時間、曜日、天気の違いによる変化を把握するために、さまざまな条件で調査します。
市、町の人口は、市、町のホームページで調べられることが多く、人口の増減、年齢別、男女別、昼夜別などのデータを入手できます。自宅から離れた町の物件を検討する場合は、当地の特性や、周辺にどれだけの人口がいるかわからない場合が多く、町や○丁目ごとの人口統計はたいへん参考になります。

商圏を広げるならば車での来店のしやすさが大切なポイントです。駐車場があるか、もしくは前面道路が停めやすいかをチェックします。多くの女性にとって、停めにくい駐車場や道路は、お店から足が遠のきます。

当該物件の付近にある建物や施設によって、お客様を呼び込むことができる場合があります。駅やバス停の近くは言うに及びませんが、不特定多数の地元の方が多く足を運ぶ役所の近辺はよい立地といえます。また、幼稚園、学校、大きな病院なども施設を利用する方の来店が期待できるので好条件といえます。

【check4】競合店

検討する店舗物件の商圏内の競合店は、実際に訪問して購入してみます。規模、売り上げ、商品アイテム、価格帯、接客、従業員数などを調べます。自分の考えるお店と比較検討して、自店の強みを生かすことで競争が有利だと判断できれば、たとえ後発であっても出店してもよいでしょう。商圏に競合店がいないのは独占状態ですので、好ましい条件といえますが、いつまでも続くとは限りません。むしろ、競合することで、切磋琢磨し向上心を持続することで、長く多くのお客様から支持されるお店に成長することが少なくありません。

【check5】方角

方角(イメージ画像)

住宅でいちばん快適な居室は南向きなのは常識です。冬は日差しが部屋の中まで入り込むので暖かく、夏は南中高度が高いので日差しが入りにくく涼しいからです。では、店舗はどの方角を向いているのがよいでしょうか。答えは、北向きです。その理由は、日差しの影響をほとんど受けないからです。最も避けたいのは、西向きです。売り上げが期待できる、午後から夕方の時間にかけて、日差しを真正面に受けてしまうので、商品への影響をさけるため、ブラインドやスクリーンなどで、店頭のガラス面を目隠ししなければいけません。せっかくのおいしそうなパンを無粋なブラインドで隠さなければならなくなります。ベーカリーは、北向きもしくは東向きの立地を選ぶのがよいのです。

【check6】建物の構造

建物はその構造の違いによって、ダクトや窓などの壁面開口が可能な場合や不可能な場合が生じたり、上階への音や振動による影響の違いがあったりします。構造は大きく分けて、木造在来工法、木造ツーバイフォー工法、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(SC造)の4つに分けられます。それぞれ特徴があります。

木造在来工法 柱と梁の軸組による建築で、昔から行われている工法です。柱、梁、筋交いなどの主要構造部を障らなければ、比較的自由に扉やダクト、配管など開口が開けられるので設計の自由度が大きい建物です。また、防音処理、断熱処理をしないと、上階への影響が懸念されます。
木造ツーバイフォー工法 壁や床の面(パネル)で組み上げる建築なので耐震性が大です。断熱性や防音性にも優れています。壁の撤去やダクトの開口が基本的に不可なので、後付けの排気設備などの設置が困難な場合が生じます。
鉄筋コンクリート造(RC造) 引っ張りに強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリートの両方の長所を併せ持った強度の大きい工法です。耐力壁はもちろん、それ以外の壁面を開口することは制限されるので排気設備の設置などは注意が必要です。防音性や耐火性に優れています。ミキサーなどの機械は、防音より振動に対する注意が必要です。
鉄骨造(SC造) 柱と梁と筋交いで強度を保つ工法です。壁面は主要な構造部でないので、設計の自由度が高い建物です。

これらの建物の構造は、不動産の案内(チラシ)に明記しているので確認できます。ただし、「木造でない建物=鉄筋コンクリート造」と勘違いして表記している不動産情報もあるので、注意を要します。

【check7】パン厨房としての設備は整えられるか

最初にチェックするのは、「排水設備」の有無、場所を確認します。給水や電気設備はどのルートを使っても可能ですが、排水管の配管は勾配が必要ですので、必要と思われるところに排水設備がないと、配管する上で床の高さ全体を最大30cm位かさ上げしなくてはならない場合が生じかねません。

次に、使用したい「電気容量」が供給できるかを確認します。電気オーブンを使用する場合は、それだけで約10kW~30kWの電気容量が必要です。想定した電気容量が確保できるかを貸主に相談するのがよいでしょう。

そして、「排気設備」のルートのチェックです。前項の建物の構造でも触れたように厨房の壁にダクト貫通ができるか。物件によっては排気ダクトを屋上まで持っていかなければいけない場合もあります。

【check8】残置物の処分

前の店で使っていた、設備、造作、備品、家具などで使用しないものは、撤去してもらうように貸主に依頼します。新しいテナントが使うか使わないかわからないものをとりあえず残して置いている場合がありますが、産業廃棄物で処分するのに相当のコストがかかります。また、一部の造作を残すことで、せっかく新しいコンセプトのお店が不釣り合いなデザイン、レイアウトになることは避けたいものです。

また、居抜き(設備や内外装が残っていてすぐ開店できる状態)物件は、閉店した理由を調査し、自店の場合には不利な条件でないかチェックします。

【check9】占有スペースと使用スペース

実際に使用した場合、占有できるスペースの範囲はどこまでかをはっきり確認します。またその他、店頭の導入部、外部の倉庫、エアコン室外機、屋外サイン、共通サインなど、についても使用できる部分をチェックします。

自分の希望に合ったよい物件を見つけたら、すぐに契約をせずに、店舗設計者など専門家に現地を同行してもらいます。不動産契約する前に、チェックすること、貸主と協議することがたくさんあります。契約した後で、「こんなはずじゃなかった」「これを交渉したかった」といってもあとの祭りです。

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